形成外科陥没乳頭
凹んでいる、出方が不十分、平坦、このような症状のある乳頭をことを「陥没乳頭」(陥没乳首)と呼びます。主な原因は、乳腺と乳管の発育のバランス不全です。指で引っ張っても外に出てこない乳首を「真性」、すぐに出るものを「仮性」と呼びます。乳首の見た目が不自然なだけでなく、「真性」の場合は授乳ができません。「仮性」の場合は授乳が可能なこともありますが、「真性」と同様、凹んでいる部分に汚れがたまり、雑菌が繁殖しやすく不衛生な状態になります。
程度が軽い場合、ニプレットという吸引器を使用して頂きます。 それでも乳頭の持続的な突出が得られない場合は、手術をおすすめします。
軽度な陥没の多くは、乳頭周辺部の皮膚が高まっており、中心部のみが陥没している状態です。また、重度な陥没は、乳管束とよばれる組織が、乳頭を強く牽引しているために起こります。程度の強い陥没ほど手術の対象となり、また、強い陥没ほど完全に突出した乳頭を形成することが難しくなります。不衛生な状態から起こる乳腺炎とは、乳腺という母乳をつくる器官が炎症を起こす病気です。放っておくと乳腺の正常な部分まで破壊され、うつ伏せに寝ることができないほど、激しい痛みをともなうことがあります。また発熱するため、日常生活にも大きな支障をきたし、膿がたまって乳房内に膿瘍(のうよう)ができてしまった場合は、切開するという処置が必要になります。
その後の授乳等も考慮した治療法
乳管温存法
局所麻酔下にて、乳頭周囲を2ケ所かでZ型に切開します。その部位より皮下および乳頭周囲を十分に剥離し、乳頭の突出が十分な状態でZ型の切開を形成し、立体的に縫合します。この後、乳頭が突出した状態で、乳管と皮下組織を癒着させることが必要であり、乳頭を牽引して乳頭の突出を保持するため、糸を取り付けます。この最後の処置は必要ない場合もあります。
乳頭の陥没が重度の場合、局所麻酔下にて乳頭を挙上した後の死腔が大きいと予想されるものでは、死腔を充填し乳頭の再陥没を防ぐ目的で、真皮弁を用います。 局所麻酔下にて、乳管周囲の索状物を切離した後、乳頭基部で2枚の真皮弁を交差させて乳頭基部を引き締めるように縫合します。
施術方法としましては、①の治療法が多く用いられます。乳腺炎を繰り返し乳管の温存が無理な場合のみ、②の施術法となります。手術方法は、授乳等も考慮して提案させていただきます。
傷跡は、目立ちにくいところでもあり、ほぼ完全にわからなくなります。感覚が鈍くなるなどの報告もありません。陥没乳頭の手術は、基本的には乳頭が突出した状態を作ることにあります。突出を逆に押しつけないよう1~2ヶ月は気をつける必要があります。